第2回 安心・快適な院内ネットワーク構築に欠かせないハードウェア

公開日: 2017年6月16日金曜日




 前回、院内のネットワークには複数のシステムがあって、その責任範囲がそれぞれ違っているということに触れました。

 たとえばレセコンやエックス線写真のシステムを導入するメーカーが、パソコンと一緒にそのネットワークに関わる周辺機器も持ち込む場合もあれば、そういった周辺機器に関しては医院で購入して設置する場合もあり、またその両者混合の場合もあるでしょう。

 導入時期が異なっていれば、後から入ってきたシステムは既存のネットワークに同居させることも多いので、結果的にこういったネットワークに関わる機材の所在責任がわからなくなっているパターンが多いようです。

 そういった機器についての責任の所在整理については本コラムの後半回で具体的に触れるとして、今回は院内のネットワークを構成する機器について、最低限知っておいて欲しい名称と役割、そして最低限の必要性能や金額についてまとめていきたいと思います


インターネット環境では必須の『ルーター』


 ルーターは、院内ネットワークを構成する中心に位置します。一般的には、インターネットに接続している環境下では必須の機器であり、このルーターにインターネット接続用のIDとパスワードを設定することで、ルーターに接続されるすべてのパソコンがインターネットに接続可能になります。また、単にインターネットだけでなく、院内のネットワーク内で稼働するシステムもこのルーターを中心にデータのやりとりがなされます。

 先述したように、ルーターはネットワークの中心に位置し、またインターネット接続の入口にもなっていることから、セキュリティ面でも空港の税関のような役目を果たしています。
 たとえば国際空港の場合は、人も物も税関で必ず入国審査を行い、危険と判断された場合は入国を拒否します。それと同じ役割をするのがルーターだと考えてください。インターネットに接続された院内ネットワークの場合、外部から出入りするデータは必ずルーターを通り、問題がないかを見定め、必要に応じて通信を制限したりすることが可能です

 ではこのルーター、どの程度のものを導入すればよいのでしょうか?

 まず一般的には、通信回線を提供するNTTなどの会社が基本機材として持ち込み、それをそのまま使うことが多いと思われます。もちろんこれが一番コストもかからないわけですが、昨今の歯科医院では10台を超えるパソコンが院内ネットワークに存在することが多く、先ほどのセキュリティ面やデータをスムーズにやり取りする機能に限界が生じてきます。簡単にいうと「遅い」という現象がでてきます。
 院内ネットワークを流れる情報として、口腔内写真やエックス線写真、そして最近では動画の再生などもあるようです。解像度が鮮明になればなるほどネットワーク上を流れるデータ量は大きく、機材の性能が追い付かずに「遅い」という現象がおこってきます。

 またセキュリティ面では、専門家が細かい設定をしないとより効果的な防御策はできませんが、そもそもどの程度の設定が可能なのかも、当然機材によって違いがあります。
 皆さんも、スパイ映画やドラマなどで耳したことがあると思いますが、このようなセキュリティシステムを専門的にはファイヤーウォール(防火壁)と称しています。インターネットなどを通じて出入りする危険な情報を火に例え、それを防御する壁を設置するというわけです。
 このファイヤーウォールの性能が高ければ高いほどより安全であることは確かです。ただ、それに比例して導入金額も高くなります。最近の筆者の身近なところでは、20台程度のネットワークで70万円くらいのルーターを導入したという例がありました。
 この70万円が高いのか安いのか、皆さんはどう思いますか? 筆者はセキュリティを極めた専門家ではないので、この良し悪しの評価は正確にできないのですが、安いルーターは3,000円程度からあることを考えると、仮にこの70万円を上限と考えると、金額にかなりの幅があります。でもルーターとはこんなものなのです。

 これを踏まえて、筆者が推薦するルーターはYAMAHAのNVR510という機種です(税抜定価49,800円)
 細かい推薦理由をならべるとあまりにも難しい内容と長い文章になってしまうので詳細は割愛しますが、パソコン10〜20台の一般的な歯科医院のネットワークを想定したときに非常にバランスのとれた商品といえると思います。
 このルーターに細かいセキュリティ設定を施す際は専門家に任せる必要がありますが、最低限の接続設定の難易度は、先に述べた通信回線会社より提供される基本ルーターと同じぐらいのレベルであり、比較的扱いやすいといえます。




ケーブルレスがあたりまえ!『無線ルーター(無線アクセスポイント)』


 最近はiPadなどのタブレット端末を院内で活用されている場面をよくみかけます。この場合に必須となってくるのが無線ルーターです。この無線ルーターは、読んで字のごとくルーターに無線機能がついたものなのですが、今回はルーター機能は一旦おいて、無線で接続するというところに注目して解説してみます。

 一般的に、無線接続は有線接続と比べてデータの転送速度がかなり遅くなります。わかりやすくいうと、「有線接続されたパソコンで1枚の写真を表示完了するまでに1秒かかったとすると、無線接続の場合、同じ写真の表示完了に5秒かかった」というイメージです。

 そうはいっても、やはりタブレット端末を使うメリットを生かすためには無線LANが必須です。
 無線ルーターを選ぶポイントとして参考にしたいのが、2.4GHz帯と5GHz帯の両方で通信でききるかどうか、です。これは無線の周波数といわれるものですが、最近の機種はほとんどこの両方を備えているものが多いです(少し前の機種では2.4GHz帯だけのものがあります)。
 5GHz帯は最近多く採用されはじめた規格で、ザックリ簡単にいうと、2.4GHz帯より5GHz帯のほうが速いです。ただ、お互いに長所と短所があるので、状況により使い分けるという意味でも両方を備えた機種を導入しましょう。

 こちらの推薦機種は、BuffaloのWXR-1900DHP3です(税抜定価18,700円)。こちらは無線ルーターといわれる商品で、先に解説したルーター機能も備えています。ただし今回はあくまでも無線機能のみで考えるものとして、ルーター機能をオフにして使うという想定で使用します。


ネットワークも「タコ足」で拡張できる! ハブ(ネットワークハブ)


 ハブは有線LANの接続数を増やすのが目的の機材で、電化製品のテーブルタップのネットワーク接続版というイメージです。テーブルタップは3口くらいのものから10口ぐらいのものまでありますが、ハブも5口、8口、16口、24口というパターンで販売されています。

 ハブを選ぶポイントは1点だけ、「ギガ対応(1,000メガ対応)のものを導入することです。一昔前の主流は100メガ対応ですが、昨今の主流は理論的にその10倍の速度が出るギガ対応のものを選びましょう。


そのケーブルがボトルネックかも?『LANケーブル』


 ネットワーク内の機器を繋ぐケーブルですが、実はこれも結構重要なんです。筆者のお客様のところでもLANケーブルを1本交換しただけで、目に見えてスピードが上がったという経験は何度もあります。

 LANケーブルを選ぶポイントは、「どの規格のケーブルか」です。カテゴリー5、カテゴリー5E、カテゴリー6、カテゴリー6A、カテゴリー7といった具合なのですが、「カテゴリー」の後の数字が大きくなるにつれ性能も上がり、さらにアルファベットがついたほうがその上になります。性能に比例して価格も上がりますが、最低でもカテゴリー5Eのケーブルを使いましょう
 また、少し先を見据え、かつコストパフォーマンスとのバランスを考えると、カテゴリー6Aあたりもおすすめです。カテゴリー7になると、まだ若干割高感があるようです。

 LANケーブルにも経年劣化が生じて、長期間使用しているとネットワークスピードに衰えがでてきます。「何年が交換の目安」ということもありませんが、数年ごとに丸ごと交換したいところではあります。院内の配線工事の際は、後でケーブル交換が容易にできるように配管工事をしておくことを強くお勧めします


ネットワーク構築は道路拡張工事のようなもの


 ネットワークを構成する基本的な構成要素として、上記を参考にしてネットワークを繋いでみましょう。



 ネットワークの環境整備は、道路の整備事業に似ています。スタートからゴールまで均等な広さの道路は車の流れもスムーズですが、整備が不十分で途中に1か所でも狭い道路があるとそこで渋滞を引き起こしてしまいます。
 つまり、ネットワークをできるだけ安定して運用するには、均等に余裕ある機材を配置することが重要なのです。


途中に狭い道があると、そこが渋滞の元をつくる(ネットワーク内に、古い規格の機器が途中にある状態) 


スタートからゴールまで均等に拡張工事をすることで、スムーズな走行が可能(ネットワーク全体にバランスよく機器を配置している状態)

少しでも知識があれば、トラブル解決のきっかけになる


 院内のネットワーク器機については業者任せであるところがほとんどだと思います。 
 しかし、最近ではこういったネットワーク機器が身近な家電量販店で普通に販売しています。業者まかせがあたり前だったものでも、簡単に手に入る時代なのです。
 これらの機材について深く理解する必要はありませんが、最低限の機能や役割をちょっとかじっておくと、ネットワークで起こる小さなトラブルであれば対処もしやすくなるというものです。

 今回、数あるメーカーや機種のなかで、あえて固有名詞をあげて推薦をしましたが、筆者が世の中のすべてを比較対象した訳ではないので、必ずしもベストとはいえないでしょう。しかし、あえて機種を絞って推薦することで、皆さんの1つの基準となればと考えました。
 歯科医院で使う機材でも、たとえば「診療用のユニットなら○○社製」など、機材別に代名詞的なメーカーがありますよね。コンピュータやその周辺機器でも、それと同じようなことがいえます。ここで推奨した機器は、「筆者の20年余りの経験のなかで感じた評価」ということになります。

 今回は、適正なコストでより安定したコンピュータネットワーク環境づくりという点で、導入する際に最低限満たしておきたい性能と、知っておきたい機能について解説してみました。
 今後の院内ネットワークインフラ構築の参考になれば幸いです。

 ※今回の内容は2017年6月現在の現状について、機器の性能や価格を表示しております。

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